霊水で仕込んだ越前福井の日本酒
丹生酒造の日本酒
1716年(享保元年)の創業以来、蔵のすぐそばにある八坂神社の境内で湧き出る御前水「延命の水」を仕込み水として使い、越前町産のお米でさまざまな日本酒を造っています。清酒「飛鳥井」シリーズを中心に、フルーティな味わいの純米大吟醸「さくら鞠子」、期間限定のしぼりたて生酒など、料理にも合わせやすい日本酒をお楽しみください。
~創業300年あまり。長く地元に愛される日本酒を作る老舗~
良い商品が生まれる背景には、作り手の熱い想いとこだわりがあります。
創業は江戸中期の1716年(享保元年)と、300余年もの歴史を誇る丹生酒造(にゅうしゅぞう)。2人の姉妹が醸し出す、女性ならではの感性が光る日本酒。地元の名水とお米を使い、地域に愛され続ける日本酒の魅力をご紹介します。
地元産のお米と神社の御前水で生まれる日本酒
丹生酒造株式会社
代表取締役社長 髙橋 裕子さん
嶋田 明美さん
300年あまりの歴史を築く丹生酒造を切り盛りする姉妹のお2人。長女の髙橋 裕子さんが社長を務め、次女の嶋田 明美さんが企画・営業・広報を担当する。杜氏は福井県大野市に住む井尾 光洋さん。地域に根付きながら、広く愛される日本酒造りに取り組んでいる。地域貢献を意識し、地元産のお米のみを使用。女性ならではの視点を活かして、新しい商品である純米大吟醸「さくら鞠子」もリリースした。
日本酒のさまざまな種類
丹生酒造がリリースしている日本酒は、吟醸、純米、本醸造、普通酒、きもと造り、生酒と多岐にわたります。吟醸酒は、原料の白米を4割以上(精米歩合60%以下)削り、低温で長期間発酵させたお酒です。吟醸酒の中でも、米を5割以上(精米歩合50%以下)削ったものは「大吟醸酒」と表示されます。吟醸酒の中でも、醸造アルコールを使用しないものは「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」と呼ばれます。純米酒は、米、米麹、水を原料にして製造された日本酒です。醸造アルコールを使用しないため、旨味やコク、ふくよかさなどが強く、濃醇なタイプが多いです。本醸造酒は、純米酒に近い香りと風味で、純米よりも淡麗でまろやかな日本酒です。米の外側を3割以上(精米歩合70%以下)削った白米が原料です。4割以上(精米歩合60%以下)削った白米を用いた場合は、「特別本醸造酒」と表示されます。きもと造りは、漢字で「生酛」と表記され、蔵に住み着いている天然の乳酸を使って酒母を手作業で造る昔ながらの製法です。酒母とは、蒸した米と水に麹、酵母、乳酸菌によって作られます。アルコールを生成する酵母を大量に培養することで、醪(もろみ)のベースとなります。生酒は加熱処理を行わない日本酒のことです。出来立てのフレッシュな味わいを楽しむことができます。しぼった後に濾過をせず火入れも行わず加水もしないお酒が「無濾過生原酒」と言われます。まさにしぼりたての味わいです。
※特撰、上撰、佳撰は、メーカーが独自にランク付けした呼称です。
「延命の水」と名高い湧水が、仕込み水
福井県丹生郡越前町にある「八坂神社」。丹生酒造の始まりは、この八坂神社の宮司家から分家した髙橋家の三代目が、家業として酒造りを始めた1716年(享保元年)にまで遡る。江戸中期のこの時代、神社にお神酒を奉納したのが始まりと言われている。
丹生酒造では、八坂神社の境内に湧き出る霊水を仕込み水にしている。古くから地元で「延命の水」と親しまれた御前水で、丹生酒造では設立当初から使用権を得ているのだ。この湧水を引いている家は他にもあるが、日本酒の仕込み水として使っているのは丹生酒造だけ。300年以上もの間、地域に認められてきた丹生酒造のお酒は、地域での冠婚葬祭や祭事に欠かせない。周辺の旅館やホテル、民宿、飲食店でも丹生酒造の日本酒が愛されている。
地元にゆかりのある「飛鳥井」の清酒銘
丹生酒造の主力ブランドの名前は「飛鳥井」という。名前の由来は、現在の福井県丹生郡越前町をかつて所領していた京の公卿・飛鳥井氏による。飛鳥井家は和歌と蹴鞠の師範を家業とし、六代目が八坂神社境内の高台に手植えした桜は、「飛鳥井桜」と呼ばれて親しまれたという。樹齢450年以上の飛鳥井桜から採った若芽が丹生酒造に近い台地に移植され、勢いよく成長したことから、丹生酒造の清酒銘が「飛鳥井」となったのだ。飛鳥井のシリーズだけでも、純米大吟醸、純米吟醸、特別純米、本醸造、きもと、しぼりたて、上撰、佳撰と、商品ラインナップは多岐にわたる。
地域に支えられ、姉妹2人で蔵を守る
現社長の髙橋さんと嶋田さんの姉妹が蔵を継ぐことになったのは、突然の悲しい出来事がきっかけだった。それは2015年12月のこと。髙橋さんの夫で、蔵元杜氏を務めていた大黒柱の髙橋 滋さんが他界されたのだ。
杜氏がいない中、300年以上続いた蔵を閉じるか、残された家族の力で継続していくか。髙橋さんは悩みに悩んだという。髙橋さんと嶋田さん、そして一番下の妹さん、お母様も交えて相談を重ね、祖先が守り伝えてきた重みを考え、髙橋さんと嶋田さんで蔵を続けていくことになる。酒造組合や金融機関、飲食店、ホテルといった地域の方々からの「みんなで支えるから、頑張って続けてよ」という声が大きな励みになった。嶋田さんは嫁ぎ先である隣町の鯖江市内から毎日のように通い、社長を継いだ髙橋さんを支えている。
新たな出逢いが、蔵を活気づける
髙橋さんと嶋田さんで蔵を続けていくことになったものの、杜氏がいないことは変わらない。髙橋さんは30年以上、蔵の仕事を手がけてきたが、杜氏ではないからだ。2015年度の新酒はすでに仕込んでいた3種類だけで、新たに仕込むこともできなかった。
これからどうやって蔵を続けていくか。悩んでいた2人のもとに救世主が現れる。それが福井県大野市に住む30代の杜氏、井尾 光洋さんだった。組合から紹介され、「無理かもしれない」と恐る恐る相談してみたところ、引き受けてくれた。それ以来、年明けから春まで丹生酒造の酒造りを手がけてくれている。蔵には機械がないので、すべて手作業だ。製造されるのは年間で50石(こく)ほど。一升びんで5000本分になる。
杜氏は井尾さんだが、日本酒造りに関しては髙橋さんと嶋田さんも意見やアイデアを積極的に出している。「フルーティな味わいに」「まろやかな味わいに」と感覚的な意見になるが、理想の味わいを追求しているのだ。もちろん仕込み期間中は髙橋さんと嶋田さんも、酒蔵で蒸した酒米の手もみ作業などを手伝う。また、直売所での接客に心を込めたり、ネット注文の商品を発送する際に一筆書いて同封したり、丁寧に包装したりと、女性ならではのきめ細やかな気配りを大事にしているのだ。
女性だからこその感性や視点を活かす
2020年には新商品として純米大吟醸「さくら鞠子(まりこ)」を生み出した。今までの商品ラインナップにない新しいコンセプトのお酒で、新しいファン層と市場を開拓していく期待の商品だ。
「さくら鞠子(まりこ)」という名前は、丹生酒造の歴史を語る上で欠かせない「飛鳥井桜」と、和歌と蹴鞠の師範を家業とした飛鳥井家にちなんで名付けた。「桜の精霊が、桜を植えてくれた六代目の雅縁に恋をした」というイメージから、乙女チックなお酒の開発に取り組んだのだ。
創業以来、受け継いできた地元産の原料へのこだわりはそのままに、越前町内の若手農業士・井上 高宏さんと初めて連携。除草剤や殺虫剤を使わずに栽培された、米飯用の早稲の品種「ハナエチゼン」を初めて使用した。桜をイメージしたラベルは、福井市の女性デザイナー水野 美紀さんに手がけてもらった。こうした新しい出逢いも、地域の繋がりから生まれている。
広く愛される日本酒をめざして
300年以上の歴史を胸に、新しいことにも挑戦する丹生酒造。これからも大事にしていくのは、地元産の原料にこだわり、喜んで買ってくださるような日本酒を造ることだ。日本酒によって使うお米の種類を変えているが、いずれも大半が越前町産のお米のみ。飛鳥井シリーズのお米は、ずっと昔からお付き合いのある農家さんに作ってもらっている。手がける日本酒の種類は多岐にわたり、テイストはさまざまだ。きもと造りの日本酒は、もともと蔵に住み着いている乳酸菌を活かして自然に発酵させており、無添加だからこその自然な味わいを楽しめる。濃醇な味わいをぜひぬる燗で味わっていただきたい。
しぼりたては新酒の時期だからこそ楽しめるフレッシュな味わいが魅力。毎年一番最初に出荷する商品だ。特にしぼりたて無濾過生原酒は限定商品で、その年ならではの旨味を味わえる。冷蔵、冷や、熱燗など、飲み方によっても香りの広がり方や味わい方が変わってくるのが、日本酒の面白さのひとつだ。丹生酒造の日本酒は、好みに合わせて数年寝かせて熟成酒にするのもまた良い。ぜひ自分にとってのお気に入りの一本を見つけてほしい。
ショップ紹介
丹生酒造株式会社(にゆうしゅぞうかぶしきがいしゃ)
〒916-0122
福井県丹生郡越前町天王18-3
創業は江戸中期の1716年(享保元年)。300年以上もの歴史を誇り、地域に根付いて広く愛される日本酒造りに取り組む。地元産の原料にこだわり、仕込み水は蔵のすぐそばにある八坂神社の境内に湧き出る霊水を使う。お米はほぼ越前町産。純米大吟醸の清酒銘「飛鳥井」シリーズを中心に、新商品である純米大吟醸「さくら鞠子」、期間限定のしぼりたて生酒など商品ラインナップは豊富。「延命の水」として親しまれる水と越前町産のお米から生まれた日本酒で、越前の旨味を味わえる。
こちらのショップの商品はお酒です。
20歳未満の方には販売できませんので、ご了承ください。