冷凍されずに水揚げしたまぐろを新鮮なまま詰め込んだ缶詰
水揚げ高日本一の港で作る
こだわりの風味『勝浦の鮪』
冷凍まぐろにはない“うま味”がぎゅっと凝縮された新鮮な生まぐろ。地元でなければ味わえない風味をそのまま缶に閉じ込めているのが、『勝浦の鮪』です。市場で仕入れてすぐに缶詰工場に持ち込み、その日のうちに蒸し加工したおいしさ。上質な生まぐろの風味を失わない完成度の高さが人気の秘密。
~那智勝浦が持つ資源を最大限に
活用し、輝く地域づくり~
良い商品が生まれる背景には、作り手の熱い想いとこだわりがあります。世界遺産「那智の滝」、はえ縄漁法水揚げ高日本一を誇る「生まぐろ」など、景勝地としても、港町としても名高い那智勝浦町。そんな恵まれた観光資源を活用して、地域が潤い輝いていくための活動をしているのがNPO法人ヒカリヲです。地元で育ち、今も地元で活躍するメンバーたちが、こだわり抜いて作り上げた本場のおいしさが、地域に新たな光を差し込もうとしています。
水揚げ直後の生まぐろ。地元のおいしさで
地域貢献。
特定非営利活動法人ヒカリヲ
理事長 久保 丈二さん、 副理事長 東 理さん、 副理事長 森川 竜一さん
南紀くろしお商工会 青年部のメンバーとして、地域で行うイベントの主催、祭りの運営など、多彩な活動に参加。青年部卒業のタイミングで、ヒカリヲを設立する。エネルギー販売、印刷業、生花店経営の本業を通じて、地域経済の活性化に貢献する一方で、地域資源を活かした活動に取り組む。2019年から、はえ縄漁法水揚げ高日本一の紀州勝浦産生まぐろを活用した「まぐろ缶開発プロジェクト」に着手。約1年の開発期間を経て商品化に成功し、日本一のおいしさを全国に届けている。
勝浦の鮪
市場から工場に持ち込み、新鮮なまま蒸し加工して仕上げた和イタリアン風味のまぐろ缶。和歌山県産の食材を豊富に使った味わいが、贅沢なひと時をもたらします。『梅入り柚子マリネ』『きのこの醤油マリネ』『赤山椒トマト仕立て』の3つの味をラインナップ。そのまま食べるのはもちろん、バゲットに添えても、パスタとからめてもおいしく、バリエーション豊富な味わい方ができる缶詰です。
鮮度が違う、うま味が違う
生まぐろと冷凍まぐろの違い
市場に流通するまぐろのうち、実にわずか1割に満たない生まぐろ。冷凍まぐろでは味わえない滋味深く、豊潤な風味が最大の魅力とされている。ではなぜ、流通量がこれだけ少ないのか。そのわけは、鮮度の維持にある。日本で多く流通するまぐろと言えば、「クロマグロ」「ミナミマグロ」「キハダマグロ」など。「クロマグロ」はヨーロッパや地中海、北米西海岸など、北半球の海が産地。「ミナミマグロ」はその名の通り、南半球に多く生息し、インド洋やオーストラリアおよびニュージーランド沖で多く獲れる。
いずれにも共通するのが、日本から遠く離れた海域であること。暑い海域からまぐろを日本まで持ち帰るには、冷凍が欠かせない。そのため、日本で流通するほとんどが、冷凍まぐろである。一方、生まぐろの場合、漁場は日本近海に限られる。漁港から近くの海域で獲れる数少ないまぐろだけが、「生まぐろ」として流通する。こうした背景を考えると、その希少性の高さにも合点がいくだろう。
日本一の水揚げ高
生まぐろの本場・那智勝浦
那智勝浦は、日本有数の生まぐろの産地。伝統的なはえ縄漁法における水揚げ高は、日本一を誇っている。そんな港町で、地元の若手経営者らが団結して立ち上がったのが、ヒカリヲだ。メンバーの業種は、実にさまざま。主だったメンバーである理事長の久保丈二さんは、印刷業を営む。東理さんと森川竜一さんの両副理事長も、生花店、エネルギー販売会社の経営者。まぐろはもちろん、水産物や食品産業に携わった経験はない。
そんなみなさんだが、幼いころから地元で育ち、日常的に生まぐろを口にしてきたのだから、品質の良し悪しは十分に分かっている。「一時期、県外で仕事をしていた頃、よほどの理由がない限りは、わざわざまぐろを買って食べようとは思いませんでしたよ」と森川さんが言うように、勝浦産の生まぐろは冷凍まぐろとは比較にならないおいしさを秘めている。この重要な地域資産を最大限に活用して、何か新しい名物・特産品を作ろうと始まったのが、「鮮度日本一のまぐろ缶プロジェクト」であった。
大水害で得た苦い経験
地域のために立ち上がる
ヒカリヲの設立背景には、メンバーたちの苦い体験がある。2011年9月、台風12号が紀伊半島に甚大な水害をもたらした。広範囲で1000mmを超える大雨を記録。土石流などの災害によって56名の死者を出した。那智勝浦町の観測所でも1186mmもの記録的な大雨が観測され、死者数は29名にも上った。
この時、商工会青年部のメンバーは、災害からの復旧に何か役立ちたいと行動を起こした。だが、救助や復旧作業に関する専門的な知識・技術を持たないことから、具体的な行動が何もできず、行政の指示に従うしかなかったという。「あの時の苦い経験は忘れられない。有事の際に備え、支援できる体制を整えようとヒカリヲを設立しました」(東さん)。また同時に、平時には地域の発展や観光PRにつながる活動ができないかと考え、地域資源を活かした特産品づくりである「日本一の缶詰プロジェクト」が始動したのだった。
生まぐろと和歌山の魅力を
すべて缶に詰め込む
和歌山南部の海域は、「ビンチョウマグロ」の格好の漁場。勝浦漁港で水揚げされたまぐろは、近隣の市場でセリにかけられる。「缶詰に使うなら冷凍で十分だろ」という仲買人の声もある中、選りすぐりのまぐろを仕入れているのがポイントだ。加工するのは、市場から徒歩10秒にある缶詰工場。すぐに工場に運び込み、その日のうちに蒸し加工までを完了させてしまうからこそ、新鮮さが違う。
商品開発を支えたのは、商工会を通じて知り合った料理研究家の貝谷郁子氏。和歌山の食材や料理と、イタリアの食文化に深く精通したアドバイザーの提案を取り入れて、和イタリアン風味に仕上げた3つの生まぐろ缶を商品化した。さらに、まぐろだけでなく、他の食材や調味料もできる限り和歌山産にこだわり、地域資源の最大活用を目指した。
試作を繰り返したどり着いた
唯一無二のおいしさを全国へ
試作を何度も繰り返していく中で、さまざまな課題に直面したという。「加工に関して一番困ったのが、加熱によってしょうゆや山椒などの風味が飛んでしまうこと。最適な配合や調理手順を見つけるのに、予想以上に時間がかかってしまいました」(久保理事長)。幾度となく試作を繰り返し、ようやく満足できる品質へとたどり着く。だが、新たな課題にも直面したという。
折からの物価高の影響を受けて、食材の仕入れ価格が高騰してしまったのだ。市場での買い付けでは、生まぐろの価格が3倍にまで跳ね上がることもあった。また、品質へのこだわりも、コストを圧迫した。たとえば「赤山椒」は、通常の山椒よりも長期間熟成させる点が特徴。独特の風味が生まれるが、本来の収穫時期を過ぎて熟成させるため、天候不良などのリスクが高まり、栽培コストが上がってしまうのだ。こうした品質面、価格面での調整も幾度となく繰り返し、ようやく完成させた唯一無二のおいしさ。添加物を一切使わない安心感も魅力だ。
こだわり抜いた
3つのおいしさ
『梅入り柚子マリネ』は、塩だけで漬けた南高梅を丸々一粒使っている。「梅を崩してまぐろの身と和えて召し上がってください。酸味がしっかりと利いているので、日本酒のアテに最高です」と森川さんのコメント。梅の酸味を残すために、知恵を絞って作り上げた思い入れのある一品だ。
勝浦産しょうゆに、和歌山県古座川産ニンニクを利かせた『きのこの醤油マリネ』は、そのままでもおいしいが、加熱してアヒージョ風にするのが久保さんのおすすめ。「バーベキューに持ち込んでいただいたり、バゲットに合わせて食べていただいたりと、いろんな楽しみ方ができる」(久保さん)。パスタとからめても、ライスサラダで味わってもいい。
『赤山椒トマト仕立て』は、じっくり長期熟成栽培した和歌山県産の赤山椒で仕上げている。完熟するまで長期栽培した赤山椒の風味は、まさに地元だけの味わい。専用ミルで挽くことで、さらに風味が増している。3タイプの中で最も使っているオイルが少なく、女性に好まれるのが特徴。低カロリーなので、体型維持が気になる方やダイエット中の方にもおすすめである。
大きな反響を得て、
さらに次の商品開発へ
日本一の生まぐろの町が生み出した「日本一の缶詰」は、すでに各方面からの注目を集めている。「鮮度感が他にはない」と太鼓判を押したのが、阪神百貨店のバイヤー。多種多様な食品・食材に精通したプロの目に留まり、阪神百貨店が主催したワインフェスに出品すると、ワイン愛好家の方々からの高い注目を集めた。また、大手キャンプ用品ブランド『LOGOS』 でも、簡単アウトドア飯として特集され、非常に大きな反響を得ている。メスティンやシェラカップがあれば、どこでも加熱でき、パスタやバゲットなどとの相性の良さも高く評価されている理由だ。
他にも、公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@user-xn6jj5iz6p/featured)でレシピが紹介されているので、ぜひ参考にしていただきたい。自分だけのオリジナルレシピにチャレンジするのもおすすめ。生まぐろ独自の新鮮な風味が、どこでも手軽に自由なスタイルで楽しめるのも、この商品の大きな魅力と言えるだろう。
ヒカリヲの収益は、
世界にも広がっていく
地域貢献を目的に生まれたヒカリヲだが、活動目的は町おこしや観光PRだけに留まらない。収益の一部は、ヒカリヲ基金に使われている他、海外の紛争地域への寄付金にもなっている。さらに現在は、より素材の風味を引き出した新商品の開発も進めているとのことで、今後が楽しみである。本業の傍らで、精力的にヒカリヲの活動を続けている久保さん、東さん、森川さんらのメンバー。持続的な活動によって、地域内外に好影響を与える組織を目指しているのだ。
大規模災害で得た経験をもとに、人口減少に悩む地域を盛り上げ、生まれ育った町の魅力を多くの人に届けようと知恵を絞るヒカリヲメンバーたち。こうした想いが強いからこそ、他にはない魅力ある商品が生まれたと言えるだろう。たくさんのこだわりと工夫、そして和歌山の魅力が詰まったひと缶。まずは気軽に手に取ってもらいたい。
ショップ紹介
特定非営利活動法人ヒカリヲ
〒649-5321
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町字宇久井80-3 株式会社モリカワ内
地元商工会の青年部OBたち11名で組織したNPO法人。地域の活性化・町おこしを目指して2018年に設立される。地域資源を活用した事業として、紀州勝浦産生まぐろを使った特産品を企画・製造。収益の一部は、基金や海外への寄付金として使われている。