ブランドストーリー

時代を反映した挑戦的な酒づくり

千代の園酒造株式会社

代表取締役 本田雅晴さん

戦後間もない頃に全国の酒蔵に先駆けて純米酒造りを行い、近年ではお菓子メーカーともコラボレーション。いつの時代も挑戦的な酒づくりを貫いてきた「千代の園酒造株式会社」が、日本酒通をもうならせる酒をつくれる秘密とは?



純米酒・吟醸酒・本醸造酒の違い

米、米麹、水のみで作られた日本酒を純米酒、この原料に醸造アルコールを添加した日本酒を本醸造酒と呼びます。一方、吟醸酒は、醸造アルコールを添加しているかどうかに関わらず、精米歩合60%以下の米を使い、低温発酵で作られた酒を指します。


米への深いこだわり

豊前街道の宿場町として栄え、今もなお風情ある町並みが広がる熊本県山鹿市。この地で酒づくりを行う「千代の園酒造株式会社」の創業は、1869年(明治29)のこと。米問屋を営んでいた初代の本田喜久八さんが、酒造りに着手したことに始まる。元々、米問屋だっただけに米への想いは人一倍強く、そのこだわりは、大正から昭和にかけて熊本で栽培されていた酒造米「神力」を進化させ、「九州神力(きゅうしゅうしんりき)」という新しい米の品種を生み出したほど。



「酒の味を大きく左右する、“米を磨く”という精米での工程。それは私たちが思い描くおいしい酒づくりには欠かせない大切な要素なので、この工程一つとっても決して手を抜きたくないんです」。
創業時からの技術を受け継ぐ熟練の杜氏が、湿度や気温、気候に合わせて精米や蒸米の具合を微調整。このように米へのこだわりは、創業当時から変わることなく、脈々と受け継がれているのだ。



阿蘇の大地が生み出す
清らかな水の美味しさ

名酒のイメージが強いのは北陸・東北地方だが、冬にしっかりと気温が下がる、ここ熊本県山鹿市もまた負けず劣らずの名酒を生み出す町だ。その秘密は、阿蘇の大地の水で育まれた米のほか、阿蘇外輪山から湧き出す澄んだ伏流水にもある。「千代の園酒造株式会社」では、この清らかな水を使って、この地域の特徴である寒い冬の気候を巧みに利用し、酒好きをもうならせる名酒を生み出していく。
「やはり酒のおいしさの決め手は水。阿蘇の伏流水は、軟水なので発酵が穏やか。低温状態での発酵が必要なんです。だから私たちの酒蔵では、この冬の澄んだ空気と低温を利用して、杜氏を筆頭とした蔵人が長年培った感覚を用いて、発酵状態を見極めながら酒づくりを行っています」。
こうして寒造りの時期に仕込まれた酒は、まろやかさもありながら、キレとコクのバランス最高の味わいに。



「挑戦的」な酒づくり

そんな山鹿市の中でも「千代の園酒造株式会社」は、一貫して挑戦的な酒づくりを行ってきた。戦後まだ日本で普通酒が全盛だった時代に、全国の酒蔵に先駆けて純米酒造りに着手したり、30年ほど前にワインと同じ良質のコルクを使ったびん囲い手法で大吟醸を作ったり。これまでの概念を飛び越えた酒づくりを行うのは、その時代を生きる人の日常に寄り添いたいからだそう。
「飲み手の嗜好が多様化した昨今。飲んでおいしいお酒はもちろん、料理と合わせても楽しいお酒を作りたいとも思っています。飲み手の心をより豊かにできるように、伝統や文化を継承しつつ、私たちの酒づくりも進化していきたいんです」。



伝統と革新が生む
新商品の数々

いつの時代も飲み手と酒の距離を近づけてきた「千代の園酒造株式会社」。その歴史は初代が米問屋から酒蔵にくら替えしたことに始まるが、長い歳月が経った今でも、全国の酒蔵においても異端で革命児的であることは変わらない。
近年では、大阪のお菓子メーカーとタッグを組み、人気菓子に合う酒を開発。この商品には、熊本の伝統酒「赤酒」を使用している点も重要なポイントだ。



地域に根ざした酒づくりを行い、ときに革新を織り交ぜて遊び心満載に、いつも飲み手を楽しませてくれる「千代の園酒造株式会社」。伝統と歴史を受け取りながらも新しい挑戦の手を緩めない姿勢は、この先も飲み手の心を捉えていくに違いない。
「これからも飲み手に求められるような酒づくりを行っていきたいですね。みなさんに喜んでいただけるのであれば、新しい商品づくりにも挑戦していきたいです」。



ショップ紹介

千代の園酒造株式会社
〒861-0501
熊本県山鹿市山鹿1782

米問屋を営んでいた初代が、明治29年に酒づくりをスタート。戦後、全国の酒蔵に先駆けて純米酒造りを行い、その後もワイングラスで味わう大吟醸や駄菓子に合わせる酒なども開発。酒蔵には、米と水にこだわった日本酒を販売する売店や、かつて酒づくりに使用していた道具を展示する資料館が併設する。